2017年2月14日火曜日

「『部活動指導者としての教師』の今後」(長文です)

以下、戯れ言ながら、僕なりの危機感です。
新しい学習指導要領の案の文言に、部活動を「持続可能な運営体制が整えられるようにする」とある。これは果たして可能なのか。
僕が「部活動指導スタートブック」を書いた理由は、
①教員養成段階で、部活動指導者のための指導がほとんど行われていないこと
②現場に出ても部活動指導の研修がないこと
③多くは顧問のやり方に一任されていること
④中学校の教員になったら当たり前のように毎日活動があるのに、それがあまり前面に出てこないこと
などが挙げられる。困る人がいて当然。世には教科指導や学級経営の本はあふれるほどあるのに、部活動指導をどうしていけばいいのかという本はおそらくなかった。教員養成段階の学級経営の指導がないという問題点をかねてから指摘され、それを実現させたのは京都橘大学の池田修先生。いまではその必要性からか、他の大学でもこの視点の授業はあるだろう。
しかし、昔からその分野の本はあった。ただ、部活動にやはりなかった。書店で目にするのは勝つためのそれ。勝つ以前に、部活動顧問としての仕事が全くわからない人が先生になって、いったい何からすればいいかわかるはずがない。学級であれば、荒れたら困るということで何かと手ほどきなり手助けなりがなされる場合がある。
でも、部活動はどうか。「部のことは部で」と一任され、根本的な解決がなされないまま日が過ぎ、問題が再発すると「何してるんや、ちゃんと指導したのか」「だから◯◯部は」と後ろ指さされる。
そんなのが中学校の現状だった。少なくとも、僕が知っている範囲ではそうだった。それがここに来ての「ブラック部活」云々。僕はここではこの賛否はおく。本題ではない。
僕はここで、上の①の視点の強化を大いに推したい。
養成段階で部活動指導者としての教師という視点で学生に啓発、指導していくことで、採用されてからの働きが劇的に変わると考えている。「そもそも教師の仕事じゃない」というなら、もう完全に切り離すといい。仕事じゃないのだから。
でも、学校で行っている以上、学校の先生が指導している時点で十分な教育活動だと僕は思っている。複数顧問制を打開策としてあげる向きもあるが、何もわかっていない先生が部の活動に関わることがかえってマイナスになることも大いにある。安全とか健康とか、基本的な学校生活との両立に対しての考え方とか、こういうのが知見として何も備わっていない人が複数顧問だからといって担当に加わったとしたら、かえってトラブルのもと。
授業の指導案を検討するのと同じように、徹底的にケーススタディや健全な活動をどのようにやっていくべきかというディスカッションを通して、自分の部活動指導観を育成する。それによって青くても、甘くても、自分なりの形がイメージできる。もし現場に詳しい大学関係者がいれば(たぶん大学の先生になると思うのだが)、第なり小なり指導して学生の将来に寄与できると考える。
「しごく」「しめる」などの指導観がある。スポーツの世界では今でもあまり違和感なく用いられている言葉のように思う。エビデンスはない。あくまで印象批評だが、当たらず遠からずだろう。こういう選手生活を送ってきた学生がやがて教師になり、自分が受けてきたことが果たして正解なのか何も疑問をもたず「同じように」指導をする。当然。「どう指導するか」という視点を持たずに指導すること環境がそこにあるのだから。持たず、というより、持つことの必要性を特に指導されないまま現場に出ているのだから無理はない。経験してきたようにやるしかない。もし、自分の選手時代のそれに疑問を持ったにせよ、指導者としての視点は「指導者になる」という自覚をもって初めて発動される。選手でありながら「俺ならこうする」「私はこういう先生になって、こんな指導をする」と日々過ごす人はよほど意識が高い人だろう。ただ、それが誰に批評されることもなく、指導者になっていく(なっていかざるをえない)のだから、無茶や無理があっても何ら不思議ではない。
これだけ忙しくなっている現場で、新採用の先生が変な部活動指導をしているとしてもすぐに気づくことは難しい。わかったとしても、そもそもなぜそれがいけないのかということに、その時点で同僚が指摘するだけでわかるものだろうか。備わっていても、失敗はある。生徒は自分の思ったようにはならないから。なのに、備わってもいない人に、丸腰で指導させてしまっているのが、残念ながら現行のシステムだ。
部活動の組織運営をブラックボックス化させないためには、ある程度の共通認識が必要。だとすれば、OJTによる部活動指導の指導を若い先生にしていくのではなく、養成の段階で行い、ひいては初任研などで授業研究並の研修が必要だと僕は考える。「研修が増えるじゃないか」「そこまでして若い先生の負担を増やすな」というのであれば、もう部活動の顧問を新採用すぐの先生に担わせること自体がリスキーだと思わざるを得ない。
ベテランの先生が「俺らの時代はなあ……」と苦労譚を聞かせても、それは何の解決策にもならない。ベテランの経験を邪険にしているのではない。時代が変わっただけだ。「だけ」だけど、それが大問題であることを、そろそろ時代が気づき始めている。今まで教師の良心に拠るところが大きかった部活動指導がまさに過渡期を迎えている。養成段階できっちりとした指導を行い、また、初任研や若い先生への適切な研修計画(それがある程度整理された体系的なものであることが望ましい)のもと、生徒を育てて、同時に部活動指導者としての教師という視点で、より成長を支えていかなければならない。
これだけ大きな話題になっているのだから、条件面の改善で済む話ではないと僕は思う。いずれにせよ、改革の機会ととらえ、現在従事している僕もできることをしてみたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

高校版 修学旅行に行ってきた

二泊三日の修学旅行を終えた。よかった。誰も損をしない行事になった。 ちょっと昔、修学旅行委員長に推した生徒がいた。引っ込み思案、でも、力がある。彼はやりたそうだったので、僕が推した。八面六臂、気配りや決断力があった。その彼をレクレーション大会のあと、みんなでサプライズで感謝の言葉...